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喧騒と静寂、里の伝統担う 滋賀・安曇川源流、針畑の盆
2018年9月9日
 民家の庭先で浴衣姿の若者が踊る。独特の動作で太鼓をたたき、振りかぶって下ろす。笛や鉦(かね)の音が重なって夜の里にこだまする。

 安曇川源流・針畑川沿いの高島市朽木古屋で8月14日に行われた六斎念仏踊り。京都府と福井県境近くの針畑地区は、若狭と京を最短で結んだ鯖街道の「針畑越え」の途中。古くから人々が往来した山あいには昔ながらの営みが残り、盆にはその特色がより鮮明に現れる。

 六斎念仏は、仏教で戒律を守る日とされる「六斎日」に由来する芸能。古屋では盆行事として精霊供養のために始まったといわれ、滋賀県選択無形民俗文化財に選定される。後継者がおらず中断した時期もあったが、2016年、古老から手ほどきを受けた都市部の芸術家たちの協力で復活にこぎ着けた。

 「俺たちも」。触発され、集落にルーツのある若者2人も昨年から参加。大工の梅本匠さん(23)=朽木野尻=は、保存会会長として継承に努めてきた一義さん(81)を祖父に持つ。玉の汗を浮かべて踊り、「生活があっての伝統。ここに暮らして担っていきたい」と将来を見据えた。

 一行は家々を回って念仏踊りを上演。終盤には、はやしを響かせて夜道を練り、行事を盛り上げた。

 翌日は打って変わってしめやかだ。各家の男たちが川辺で精霊送りのための「河原仏(かわらぼとけ)」をつくる。石を積んで六つ並べる。夜を待ち、日付が変わると家の仏壇から供え物を運んで静かに祈る。川面に映るろうそくの火が穏やかに揺れた。

 二晩にわたる山里の盆行事は喧騒(けんそう)と静寂のうちに過ぎていった。
京都新聞


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