大津市と志賀町の合併から昨年で十周年を迎えたのを記念して、志賀地域の古地図を集めた企画展が、大津市御陵町の市歴史博物館で開かれている。地元で保管されてきた三十点を展示。山林開発や土地の境界を巡る複雑な紛争の歴史がうかがえる。二十六日まで。
江戸時代から明治時代初期に作られた古地図は、多くが土地の境界、所有者や領主を示し、自治会や地域の組合などが保管してきた。昨年初頭から同館が地域に依頼して預かり、調査した。
近畿地方では江戸時代、一つの村を複数の領主に分け与える「相給(あいきゅう)」が盛んに行われた。くじ引きなどで、土地一筆ごとにどの領主に帰属するか決める場合が多く、モザイク状に入り組んだ権利関係を示す詳細な地図が数多く残っている。
土地の境界紛争は、命がけの訴訟に発展することも。江戸時代中期に北小松村(現大津市)と鵜川村(現高島市)の間で起きた境界紛争は、幕府の裁定を仰ぐ事態に発展。責任を問われ多数の村人が投獄され、獄死したと伝わる。企画展では、裁定された境界を判決文とともに示す地図を展示している。
学芸員の高橋大樹さんは「これほどの史料が今なお残っているのは大変貴重。争いもあり複雑な権利関係があったからこそ、歴史の記録が残ってきたのでは」と説明する。
地図を提供した団体の一つで大物(だいもつ)共有財産管理組合の北村吉裕組合長(63)は「年一回の山の境界確認は今も続けているが、他の地区でもこれほど立派な地図が残っているとは」と驚いていた。(問)同館=077(521)2100 |