琵琶湖周辺に生息する希少なトンボ「オオサカサナエ」の詳しい生態を大津市に住む小学生の兄弟が明らかにし、専門家の注目を集めている。まとめた研究成果は「第54回自然科学観察コンクール」(毎日新聞社、自然科学観察研究会主催、文部科学省後援)で入賞した。2月22日に東京都江東区の日本科学未来館で表彰される予定で、兄弟は「トンボ博士になるのが夢」と、生態観察や新種の発見に励んでいる。【千葉紀和】
大津市立長等小5年の白神慶太君(11)と2年の大輝君(8)。広島県尾道市で昆虫採集に興味を持ち、特にトンボが好きになった。「トンボの宝庫」とされる滋賀県で調査したいと、2年前、父の単身赴任先の大津市に、母と一緒に転居した。
これまでに、県内で生息が確認されているトンボ100種のうち86種を採取。幼虫も52種を飼育し、このうち41種を羽化させた。自宅には自作の標本が大量に並ぶ。熱心な姿勢が認められ、県立琵琶湖博物館(草津市)の共同研究「2010年代の滋賀県のトンボ類の分布状況に関する研究」にも加わっている。
今回、調査対象にしたオオサカサナエは主に琵琶湖や淀川水系に生息し、環境省のレッドリストで「絶滅危惧2種」、滋賀県のレッドデータブックで「絶滅危機増大種」に指定されている。この希少種が「なぜ白ひげ浜(高島市)に生まれるのか」をテーマに2年越しで羽化殻を拾い集め、気温との関係や他の生息地との違いなどを記録。卵は低い水温ではふ化せず、幼虫は高い水温では成長せず死んでしまうことなどを確かめた。同コンクール小学校の部で全国1万2327点から「2等賞」に選ばれた。
同博物館共同研究の代表を務め、水生昆虫に詳しい「みなくち子どもの森自然館」(甲賀市)の河瀬直幹学芸員(39)は「調査は驚異的な粘り強さで、専門家でも容易にできることではない。生態が詳しく分かっていないオオサカサナエが羽化する時期のピークをデータで示したことは大変意味がある」と評価する。
兄弟は息もぴったりで、捕獲が得意という弟の大輝君は「動きが速いトンボを捕るには網を下から上に動かすのがコツ」と笑顔を見せる。調査をリードする兄の慶太君はトンボの魅力について「色がきれい。採集は宝探しをしているみたい」と話し、「県内の101種目を発見し、いつかトンボ博物館をつくりたい」と夢を描いている。 |