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新感覚スポーツ「トレイルランニング」女子たちが集う爽快?ムササビ感覚?
2013年10月15日
 「琵琶湖が一望できる山道を駆け抜けます」「プロトレイルランナーの鏑木毅(かぶらき・つよし)さんと走り方を学びます」−。こんな誘い文句にひかれて、大津市木戸のびわ湖バレイで開かれた女性限定の「トレイルランニングツアー」になんとなく参加した。「トレイル」(山道)をランニングするという言葉に、「ジョギングみたいなものでしょ」と決めてかかって臨んだが、いやいや全然違った。まるでムササビになったみたいだった…。

■走るも止まるもOK

 ザザッザザザザッ−。一行が下り坂を走ると、ふぞろいな足音が森に響く。おぼつかない足取りだった私も、コースの半分を過ぎるとやっと慣れてきた。

 土を蹴って、横っ飛びして、木の根っこをジャンプ! 風と木が通り過ぎる。体の力を抜くと、「走っている」というより森を滑空している感覚。まさにムササビだった。

 トレランは、山道や自然公園など未舗装の道を走るスポーツ。健康志向の高まりや登山ブームもあって約5年前から人気を集め、現在国内で年間約200の大会が開かれている。女性の参加者“トレラン女子”が多いのも特徴だ。

 樹木が生い茂る山道を走るので木や石、くぼみなど、道の状態に合わせて巧みに足を動かすことが求められる。これが、ロードランニングや登山との大きな違いであり、魅力なのだという。

 インストラクターを務める鏑木さんは、トレイルランニングの国内第一人者。ツアーの出発時やコースの途中での「走り方講座」で、こうアドバイスしてくれた。

 「リラックスして。自分が『かっこいい』と思う自由なステップで!」

 とはいえ、当然ながら上りはつらい。ツアーは「初級」としていたが、全くの初心者は私を含め3、4人程度で、普段から練習している人が多いようだ。ヒョイヒョイ上っていく人たちの背を見ながら、20代という己の年齢にむなしさを覚えつつ、「高校時代、バレーボール部の部長だった」というあまり意味のない意地を支えに乗り切った。

 でもこのトレラン、別に止まっても歩いてもいいらしい。「ロードランニングは止まったら敗北感があるけど、トレランは景色を見たり、鳥の声を聞いたりするのも魅力。『ランニング』というけど、走り続けなくていいんです」と鏑木さん。なるほど、それなら初心者も楽しめる。

 山頂付近からは、誘い文句通り、琵琶湖が一望できた。キツツキがキをツツく音も聞こえる。ブナの幹が不思議な模様をしている。息が上がっても、いろんな発見があってすぐに回復する。森を自由に走り回るのは新鮮な気分だし、子供の頃に戻った懐かしい感じもする。トレラン奥深し!

■観光へ官民がタッグ

 実はこのツアー、観光庁の「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」のひとつ。同事業は全国の自治体や観光団体に呼びかけてツアーの案を募集し、選定したアイデアについて同庁や運輸局、地元、旅行会社などで、内容のブラッシュアップや情報発信を図るというもの。

 今年度は酒蔵ツアーやダム見学、島巡りなど全国から78件が選ばれた。

 今回のツアーは、JR新大阪、京都両駅からバスでびわ湖バレイに集合。2時間半走ったあとは、風呂やバイキング形式の食事、鏑木さんとのじゃんけん大会などがあった。

 参加者は、40代を中心に14〜57歳の30人。JTBが呼びかけ、多くは近畿圏の人たちだったが、岡山、愛知、福井県からも参加していた。

 近畿運輸局観光地域振興課の梅染昭子課長は「滋賀観光のテーマは『歴史』が中心だが、県内は素晴らしい自然にも恵まれている。大阪や京都から近い大津を皮切りに、自然の魅力をウリにした企画を作りたかったんです」と説明した。

■鏑木さんに熱い視線

 それにしても鏑木さん人気はすごかった。参加のきっかけを聞いてみると、「鏑木さんの講習を受けたかった」「鏑木さんに会いたかった」「鏑木さんを見てみたかった」と、鏑木さん、鏑木さん…のオンパレード。さすが世界的に有名なランナー、ほとんどが鏑木さん目当てだった。

 実際、鏑木さんの指導はわかりやすく、ウイットも効いて、優しい声と笑顔も印象的だった。「トレラン女子」が憧れないわけがない。記念撮影をしたり、ランニング姿に黄色い声が飛んだりする場面もあり、「こんなに近くで話せるなんて!」とみんな興奮気味だ。

 鏑木さんにひかれて岡山県倉敷市から参加した会社員の渡辺ゆかりさん(37)は「遠い存在だった鏑木さんと会話できるなんて。トレラン仲間に自慢します」とうれしそう。京都市左京区のパート従業員、北口ひとみさん(46)は「鏑木さんがすぐ近くで講習をしてくれて、参考になった。教わった走りを早く練習で試したい」と目を輝かせた。

■滋賀観光の新たな切り札に?

 でもこの企画、最終的には鏑木さんの力を借りなくても全国から滋賀の山の魅力を目当てに大勢のトレランファンが訪れるようなコンテンツに育ってほしいところだ。

 「まずは受け入れ側の意識を高めたい」とツアーを提案したびわこビジターズビューロー広報宣伝部の中島良一部長。「登山やトレイルウオーキングは馴染んできたけど、トレランはまだこれから。実際にツアーをやってみることで、現地の山岳関係者や自治体などがトレランのコース整備やPR方法をイメージできるようになればうれしい」という。

 今回のツアーについて、会場となったびわ湖バレイの担当者は「思ったより盛り上がった。グリーンシーズンのメニューのひとつとしてPRし、登山とは違う客層を受け入れたい」と前向きの評価。なるほど、まずは地元が地元の魅力に気付くことで、県内外に発信できるわけだ。

■いずれは「ビワイチトレイル」!?

 もちろん、このツアーをきっかけに滋賀の山へのリピーターが出ることも目指す。渡辺さんは「中国地方に住んでいると、滋賀県はイメージがわきにくい。琵琶湖がきれいな滋賀のコースを初めて走れたのは、いい機会だった」。大阪府泉南市の会社員、上野友紀さん(34)は「これまで里山を走ることが多かったので、高いところから湖や街が見えたのは新鮮で気持ちよかった。他のコースも走ってみたい」と話した。

 鏑木さんは「日本の山は四季の変化に富んでいて走っても飽きがこない。とくに滋賀は原生林が残っているうえ、都市圏から1〜2時間で来られる」と魅力を強調。「五感が刺激されて森からパワーをもらえる。僕がそうだったように、とくに何かに行き詰まった人に始めてもらいたいんです」とも付け加えた。

 観光庁によると、トレランツアーは今後も、県内の高島トレイルや湖東地域などで企画し、「ビワイチ(琵琶湖一周)トレイル」としてPRしていく予定。

 新感覚のトレラン。滋賀の新たな観光イメージの定着に一役買えるかどうか楽しみだ。
産経新聞


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