国の文化審議会が下村博文文部科学相に行った重要文化財指定の答申で、県内からは、天満神社(大津市北比良)所有の「木造天王立像」1体▽明王院(同市葛川坊村町)所有の「葛川明王院御正体(かつらがわみょうおういんみしょうたい)」6面▽大津市歴史博物館(同市御陵町)が保管する「鴟尾(しび)」4体−の3件が選ばれた。指定されれば、県内の美術工芸品部門の重要文化財は632件となる。
●木造天王立像
平安時代の作とみられ、高さ156センチ。表面にノミ痕を残して彫り出す「鉈彫(なたぼ)り」と呼ばれる技法で製作されているのが特徴で、鉈彫りとしては最も古い像の一つとされる。大らかな肉取りを採用した大型の神将形で、平安時代の神仏習合に関わる像としても貴重という。
●葛川明王院御正体
6面とも室町時代の作とみられ、直径は76〜108センチ。御正体は木や銅の円板に仏像を彫り、荘厳具をつけて壁などに掛けられるようになっている。葛川明王院御正体には不動明王像や二童子像、宝塔などが中心に彫られている。
●鴟尾
瓦ぶき屋根の大棟の両端に設置される飾りの一種で、今回答申された4体は山ノ神遺跡(大津市一里山)にある須恵器の窯跡から出土した。天智天皇が近江大津宮に遷都した7世紀ごろの出土品とされ、窯で焼いている最中に天井部が崩落し、未完成のまま窯に残されていたとみられる。内面に同心円文が彫られるなど、須恵器の形を整える技術が応用されている。 |