今が旬の湖西の不動産情報掲示板
現場から記者リポート:高島・針江「カバタ文化」 水車で常夜灯発電
2011年7月26日
 ◇エネルギーの地産地消へ 「生水の郷」6人手作り

 常時湧く水を日常生活に使い、洗う食器の残飯はコイが食べて汚れを除く「カバタ文化」が広く残る高島市新旭町針江。その住民が、地区の水車を動力源に究極のエコ発電システムと常夜灯を手作りした。東日本大震災と福島第1原発事故で注目される再生可能エネルギーの地産地消を先取りした形だ。針江の新たなシンボル・常夜灯と水を巡る住民の心意気をリポートする。

 カバタからの水を琵琶湖へ流す針江大川沿い、針江中央公園の一隅に常夜灯はある。ベンガラ塗りの柱と焼き杉板の木製で高さ2メートル余り、銅板屋根付き。和紙を挟んだアクリル板の白い小窓が淡いオレンジ色に輝く。光源は省電力のLED(発光ダイオード)。不思議なことに、風にそよぐろうそくの炎のように“揺らぐ”。電源は、約10メートル離れた小水路に昔からある直径約3メートルの水車を動力に、自転車の発電機を仕掛けたミニ水力発電で賄う。

 常夜灯も、水車の軸に取り付けた超小型発電装置も、住民がアイデアを出し、設計し、材料を集め、手作りした。中心になったのは、カバタ見学者の増加に対応するため04年に発足した針江生水(しょうず)の郷(さと)委員会環境部長、高田一雄さん(58)。動機は「下水道に感謝しよう」だった。

 針江の生活水は、カバタの生水(湧き水)を利用する伝統のシステムと、今日的な上下水道システムが並存する。針江地区から公共下水道幹線へは、高低差の関係で下水を下流側から吸引しており、そのための吸気筒(高さ約1メートル)が地区内41個所に立つ。着想は昨年末。高田さんが「吸気筒に覆いを付けて常夜灯に。地元の夢、水車発電を実現しよう」とのアイデアを針江の仲間に投げかけた。吸気筒を管理する市も快諾した。

 自営業の高田さんが設計し、同市嘱託、橋本昭博さん(57)も尽力。電気技術者の会社員、三宅進さん(58)が発電からLEDまで技量を発揮し、駆動ベルトに詳しい同、高橋正通さん(57)が伝達系を担った。常夜灯の木工は大工、芳本登巳男さん(58)、発電機を収納するステンレス箱は金属加工業、高山博さん(66)が得意の腕を生かした。手製とは思えない見事な出来栄えで、実費約20万円。生水の郷委が資金を負担。24時間稼働で3カ月半、故障はない。

 水車の小さな動力で明かりをともせるか。知恵の集積結果は「自転車の前照灯用発電機(ハブダイナモ)2台を、水車の軸にベルトをかけて駆動する」。今年4月初めまで、休日も返上して集まっては試行錯誤。水車の回転ムラから発電ムラが……どうしたものか。

 三宅さんは、これを逆手に取った。発電ムラから生じる明るさのムラを「ろうそくのような灯火にしたい」との思いを実現するため“揺らぎ”として生かしたのだ。さらに、小さなLEDの球面を削って平らにし、直線的な光から拡散する光に変えた。削ってざらついた跡は奥さんのマニキュアを塗って修復。LEDは白と黄の組み合わせと電圧設定の工夫の妙で、計60個を4面に配した。こうして、人の目にはまるで、ろうそくの炎が風に揺れるような風情ある明かりが生まれた。

 高田さんらは、常夜灯を3年がかりで18基に増やす計画だ。小型の太陽光発電(ソーラーシステム)も視野に入れる。そして、多くの針江住民に常夜灯作りに参画してもらおうと思っている。水源から下流まで気を配る水文化「カバタ」を誇りとする針江の人たちが、シンボル作りに自ら関わることこそ、水がつなぐコミュニティーの維持に重要だと考えるからだ。
毎日新聞


HOME
Copyright (C) 2011 Shoei Real Estate Corporation. All Rights Reserved