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琵琶湖疏水の世界遺産登録 ライバル多く、長期戦
2010年6月9日
 京都市が「哲学の道」や花見の名所としても親しまれている琵琶湖疏水の世界文化遺産登録を目指すことになった。市は「数年でできる取り組みではない」と長期戦を覚悟。道のりには多くのライバルや厳しい審査が待ち構える。今年で開通から120周年を迎える疏水。果たして、登録に向けた狭き門を通過できるのか。

 ◇まずは暫定リスト入り
 世界遺産は「世界遺産条約」に基づき、文化遺産689件、自然遺産176件、複合遺産25件の計890件が登録されている。日本では文化庁や林野庁などが選定する暫定リストに掲載された物件の中から、政府が各国でつくる世界遺産委員会に推薦し、審議を経て登録が認められる。
 国内の暫定リストには「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)や「平泉の文化遺産」(岩手県)など12件が掲載されているが、08年に推薦された「平泉」が委員会の審査で落選するなど掲載後もハードルは高い。
 琵琶湖疏水は暫定リスト入りが当面の目標となるが、それまでの道のりも険しい。まず、疏水やその周辺を調査し、登録する範囲や価値の評価を定めなければならない。普遍的な価値とミディ運河(フランス)やリドー運河(カナダ)など、登録済みの遺産と異なる独自の価値の証明も必要だ。国による保護の仕組みが求められるため、琵琶湖疏水の場合、文化財保護法に基づく「重要文化的景観」に選ばれることも前提となる。
 そうした課題を踏まえ、市は疏水単独でなく周辺の景観と合わせての登録を目指す。哲学の道や南禅寺の水路閣をはじめ、電力を使い蹴上の斜面で船を引き上げるインクライン、近代日本庭園の先駆者として知られる小川治兵衛が疏水の水を利用して作庭した平安神宮神苑や無鄰菴(むりんあん)などにも着目。産業遺産としてだけでなく、今も生活や周辺の景観形成に重要な役割を果たしている点を強調する。
 人々に親しまれている疏水だが、本当に世界遺産にふさわしいのか、調査は始まったばかりで価値は未知数。長期的視野に立った取り組みは、時間がたつとともに、費用もかさんでくる。市は「調査を進める中で、疏水の価値や役割を知ってほしい」としており、市民の理解や協力も不可欠となる。

 ◇国内の暫定リスト記載一覧◇
【文化遺産】
古都鎌倉の寺院・神社ほか(神奈川県)▽彦根城(滋賀県)▽平泉の文化遺産(岩手県)▽富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県)▽富士山(静岡県・山梨県)▽飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)▽長崎の教会群とキリスト教関連遺産(長崎県)▽国立西洋美術館本館(東京都)▽北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群(北海道・青森県・岩手県・秋田県)▽九州・山口の近代化産業遺産群(福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県・山口県)▽宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県)
【自然遺産】
小笠原諸島(東京都)

 ◇琵琶湖疏水
 飲料水、工業用水の確保などを目的に京都市が事業を計画し、1890年に大津市の琵琶湖と京都市の鴨川を結ぶ第1疏水が開通した。1912年には、並行する第2疏水が完成。総延長は約30キロに達し、多くの人や物資を運んだ。96年に第1疏水が国の史跡に指定された。
毎日新聞


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