琵琶湖岸の景観の美しさを数値で評価するシミュレーション手法を、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター(大津市)が31日までにまとめた。主観で評価されがちな景観の対策効果を、客観的に示せる。湖岸では地域によりマンション開発などが進むが、シミュレーション評価で、現状に応じた対策も提言できるとしている。
シミュレーションは、2007年に県民約320人へのアンケートで得た湖岸の景観要素を点数化し、これをもとに湖岸線を500メートル単位で評価し、地図データにまとめた。
さまざまな景観要素が写っている湖岸の写真24枚を示して5段階の評価を得た上で、同センターがヨシ帯などの自然景観にはプラス、人工護岸などはマイナス−など要素ごとに点数を加減し、評価した。
その結果、同じ人工護岸でもコンクリートに比べ石張りの方が好感を持たれた。大津市の比良地域のように、自然景観ではない建造物でも伝統的街並みと認識されれば高い評価が得られた。その一方で、ヨシ帯が単なる雑草と見られ評価を下げたケースもあった。
こうした評価を基に、湖岸線を「自然豊かで景観がいい」から「人工的な景観で、中から低程度」の4区域に分類。現在は評価が高くない地点も、護岸の石張りへの変更や公園緑地整備などを行うことで点数を上げることが可能になる半面、整備をしない場合は点数が大幅に下落するとの見通しも示した。
県は年度内に、湖岸沿いの景観対策を担う大津市など7市とともに、対策の方向性を共有する協議会を立ち上げる予定で、シミュレーションは、統一的な景観整備方針を考えるきっかけになる。
同センターの佐藤祐一研究員は「数値化によって、行政の対策にも説得力が生まれる」と期待している。 |