紙芝居:装苑アートが「箱館山・淡海湖物語」初上演 築造の苦難描く
2005年10月26日
 高島市今津町の箱館山中にある人工の湖「淡海(たんかい)湖」の築造にまつわる苦難の歴史を、大津市に本拠を置く芸術集団「装苑アート」が水彩ペン画の紙芝居として制作、25日、地元の市立今津北体育館で開かれたお年寄りらの交流会で初上演された。祖父母らの世代が築造にかかわったというお年寄りも多く、感慨深げに見入っていた。

 淡海湖は明治末期から30年近い歳月をかけて作られた。何度も崩落事故に遭いながら長い導水トンネルを掘り、山中にダムを築く難工事で、中心になって事業を推進した酒造家の松本彦平と息子の彦五郎は心労で急死した。完成後は水不足でろくに作物を植えられなかった山ろくの農地を豊かに潤し、今は2人の末えいの松本金吾さん(77)が淡海土地改良区理事長として湖を守っている。

 装苑アートを主宰する水彩画家の矢田健一さん(66)は、これまで湖国の民話を素材にした創作紙芝居を多く制作してきたが、淡海湖の歴史を聞いて感動。スタッフの語り部、前田佳子さん(56)と共に何度も現地を訪れ、松本さんから取材するなどして構想を練り、このほど2年がかりで「苦難の箱館山・淡海湖物語」全9景を完成させた。

 25日開かれた赤十字奉仕団と今津北年輪会との交流会で初上演され、前田さんの語りで約15分間のストーリーが展開。舞台後方のスクリーンに拡大した絵も上映され、約150人のお年寄りたちは画面を見ながらじっと聴き入っていた。松本さんは「先人の苦労が美しい絵と語りで描かれていて感動した。紙芝居を通じて多くの人に淡海湖の歴史を知ってほしい」と話していた。
毎日新聞


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